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「決める政治」言葉躍れど 安倍首相退陣へ 改憲・拉致…課題積み残し

「決める政治」言葉躍れど 安倍首相退陣へ 改憲・拉致…課題積み残し

憲法改正を訴える安倍首相のビデオメッセージが流れた自民党山口県連や県神社庁が開いた連絡会議(9日)

「安倍総理の突然の辞任に今後の不透明感を抱いた人もいるだろう」。9日、憲法改正に向けた国民投票を実現するため自民党山口県連や県神社庁などが山口市で開いた連絡会議の冒頭。国会議員や地方議員たち約120人を前に県連常任顧問の柳居俊学県議会議長は険しい表情で切り出した。 【ポイント表】安倍政権の主な政策、スローガン  県連は昨年6月、憲法改正推進本部を設置。県内19市町の首長と議長の全員が連絡会議に名を連ねる。憲法改正を目指す安倍首相は年頭会見でも「私の手で成し遂げる」と訴えた。  それだけに突然の辞任表明は地元改憲派を動揺させた。「残念だが総理の志を受け止め、新総裁に実現を強く要望したい」。柳居議長の鼓舞は10分以上に及んだが、出席の県議は「改憲は安倍さんが首相だからこそ現実的だった」と諦めの表情。別の県議は「辞める前に道筋だけでも付けておくべきだった」と悔やむ。  旧民主党政権を「悪夢」とこきおろし、「決める政治」を掲げた安倍首相。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」と世界を飛び回り、米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領との関係を築いた。辞任を表明した8月28日の記者会見では看板の経済政策「アベノミクス」について「400万人を超える雇用を生み出した」と誇った。  アベノミクスについて、重厚長大なコンビナート企業が集積する周南市の徳山商工会議所の宮本治郎会頭は「企業収益は上がり、雇用も増大。中小企業や地方の幅広い業種にも恩恵が広がった」と絶賛。内閣府が作成した「データで見るアベノミクス」の冊子を手に「これを読めば一目瞭然。日本経済は大きく改善したんですよ」と力を込める。  一方、市内の中小企業の建設会社社長は「大企業は過去最高益でも下請けは人手不足で苦しい。好景気と言われても実感できない」と首をかしげる。首相の地元下関市の市街地で客待ちのタクシー運転手男性(57)は「安倍政権の恩恵は自分らには何もなかったね」と手持ち無沙汰でこぼした。  安倍政権では「一億総活躍社会」や「日本を、取り戻す」などいさかか仰々しいスローガンも多く並んだ。うち「地方創生」について村岡嗣政知事は辞任表明を受けた記者会見で「地方再生の大きな旗印の下、東京一極集中の是正や地方の活性化に力を入れられたことをありがたく思っている」と頭を下げた。  一方、「女性活躍」については県のデータでは成果が浮かばない。2018年の調査では県内829事業所で性別による役割分担や昇進格差などをなくす「ポジティブ・アクション」を「実施している」と回答したのは約3割。2年前よりダウンした。  結婚や出産で離職した女性750人への県のアンケートでも正社員復帰を望む人は18・5%だけ。子育て女性を応援する山口市のNPO法人あっとの藤井智佳子代表理事は「大企業が少ない県内で30代以降の正社員募集はほとんどなく、まず諦めているのが実態。育休を取れない職場も多く、そういう人への支援はほとんどない」と指摘する。  安倍政権の支持者が高く評価する外交と国防についても、米国から巨額の経費で購入する予定だった地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の県内への配備計画は米側の技術的欠陥で突然中止。県内にも「特定失踪者」がいる北朝鮮による拉致問題の解決も遅々として進まなかった。  また「決める政治」と対極の印象を与えるのが中国電力上関原発計画への対応だ。原発稼働ゼロを掲げる民主党から12年に政権を奪還した安倍首相はこの方針を撤回。地元推進派に期待が高まったが、反原発の世論を考慮してか、建設の是非を示すことはなかった。  政権末期に見舞われた未曽有(みぞう)の国難のコロナ禍では「アベノマスク」などの対応が不評。苦境にあえぐ観光業界を支援する「Go To トラベル」も第2波と重なってしまった。山口市湯田温泉旅館協同組合の中野愛子理事長は「『Go To』のおかげで一定に持ち直し、なければ大変なことになっていた」と感謝する。一方で「恩恵は高級旅館だけ。中小を含め全体には行き渡っていない」と声を落とす。  安倍首相は就任直後、「明治維新を成し遂げた長州出身の政治家として恥ずかしくない仕事をしたい」と決意を述べた。先人の宰相を超える月日、国を率いて有終のいま、積み残したものに何を思うのか。