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「失われた20年」を巻き返す──ドコモ完全子会社化でNTTが目指すもの

「失われた20年」を巻き返す──ドコモ完全子会社化でNTTが目指すもの

NTT澤田純代表取締役社長

 「『失われた20年』の間に、世界の情勢は大きく変化した」。日本電信電話(NTT)の澤田純社長はNTTドコモの完全子会社化についての記者会見の中で、NTTグループの企業価値がバブル崩壊からの30年間で低迷していることに危機感を示した。ドコモの完全子会社化で、国内外に対し再度リーダーシップを発揮したい考えだ。 【画像】ドコモ新体制が掲げる5つの施策

「ドコモは3番手に落ちた」

 澤田社長は国内の移動通信事業の情勢について「現にドコモは3番手に落ちている」という認識を示す。顧客数においては依然として大きなシェアを持ちつつも、収益面でKDDIやソフトバンクの後塵(じん)を拝していると見る。  その理由の一つに、澤田社長はNTT東西に課せられた法律(日本電信電話株式会社等に関する法律、NTT法)などの法制度を挙げる。KDDIやソフトバンクに会社法上の縛りがないのに対し、ドコモやNTTは制約を受けているために動きが鈍かったとしている。  今回の完全子会社化では、こうした法制度上の問題はないという。「会社の分割はNTT東西を中心とした論であって、ドコモの完全子会社化やNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアのドコモへの移管については(NTT法とは)文脈が異なる。今回の完全子会社化については規制当局や総務省にも説明を行い、法制度上問題はないと認識している」(澤田社長)  法制度上の縛りの他に、ドコモがNTTの完全子会社でなかったことも、モバイル回線と固定回線を融合したサービス提供の遅れにつながっていたという。NTTとドコモでは互いに株主が異なり、サービスによっては利益相反も生まれるため、連携して動くには多くの会議体を設け、時間をかけて議論しなければならなかったとしている。  澤田社長は、完全子会社化によってこれまでと最も変わるのが「ガバナンスのスピード」だと話す。意思決定を高速化することで、NTTグループを横断したサービスやソリューションを強化したい考えだ。

「GAFA」のビジネス領域も視野 「単に5G提供するだけではだめ」

 NTTは足元では、固定回線とモバイル回線の融合によって国内シェアや収益の巻き返しをもくろむが、意識としてはネットワーク上で各種サービスを展開する「GAFA」(米Google、米Amazon、米Facebook、米Apple)のビジネス領域にも目を向ける。  このタイミングで完全子会社化を決めた理由に、澤田社長は「市場環境としてドコモが3番手に落ちている他、GAFAの台頭が危機感にあった」と話す。  ドコモの吉澤和弘社長は「5G時代は単に5Gのモバイルネットワークを提供すればいいというものではない」として、5Gを使ったソリューションまでを含めて提供していかなければならないとする。  「2000年前後はまだ固定のインターネットとPCの時代だったが、2010年になってスマホが普及しモバイルインターネットが中心になった。そこに今のGAFAが出てきた」と吉澤社長。5G時代には通信インフラだけでなく、その上のレイヤーまで含めた包括的なサービスを作っていかなければならないとした。  澤田社長は「(バブル崩壊までは)NTTは世界でも10指に入る企業だったが、NTTを含め日本企業はそれ以降ほとんど伸びがない。移動回線を育てるにも、『固定(NTT)は移動(ドコモ)を助けるな』という議論があった。しかしいまや移動回線がメインで、その機材はほとんどが米中の製品」と、世界的にも日本の電気通信や情報通信産業が低迷しているという見方を示す。  「5Gやその次の時代に日本が何をやるのかと考えると、われわれ(NTT)が作り上げていかなければいけないのではないか。ソリューションやサービス、その上位レイヤーに強みを持ち、コアには通信インフラがある。ドコモ完全子会社化により、『6G』(2030年めどの実現を目指し策定している次世代通信規格)や『IOWN構想』(光通信やコンピューティング技術を駆使して社会全体に高速なネットワーク基盤を敷く構想)で先頭に立つのは意味があると思っている」(澤田社長)  新型コロナによる社会活動の変化も一因だったという。「リモート型の社会が今広がりを見せており、今やらないと環境に対応できない。タイミング的にもこの時期だった」(吉澤社長)

足元では「低廉で使いやすい通信サービスの提供」

 一方のドコモとしての直近の戦略については、「低廉で使いやすいサービスを実現する」と吉澤社長は話す。ただし、その方針は今回の完全子会社化によって定まったものではないとしている。澤田社長は「値下げと完全子会社化は独立した事象だが、完全子会社化により財務基盤が整い、結果として値下げが可能になる部分はある」とする。  吉澤社長は「今回の件を通じてサービスやネットワークを強化する。その結果として低廉で使いやすいサービスを実現していきたいという思いは当然ある。顧客にしっかり還元しつつ、企業価値を継続的に向上していきたい」と話した。

「新しいドコモを創業する」 新体制が掲げる5つの施策

 吉澤氏は今回の完全子会社化を機に社長職を退く。後任には20年12月1日付で現副社長の井伊基之氏が就く。  井伊副社長は「新しいドコモを創業するつもりで挑む」として、新体制のドコモで行う施策として以下の5つを挙げる。 1. 新技術やアイデアを取り入れて新たな価値を次々と生み出す 2. あらゆる年代から支持されるサービスと価格を提供する 3. 通信もサービスも期待を上回るスピードと品質を提供する 4. 個人や法人の顧客から信頼される企業になる 5. 新しいライフスタイルを提案し豊かな未来を開拓する  この中でも優先すべきこととして、井伊副社長は4番の「信頼回復」を挙げる。「今ドコモ口座の件でご迷惑やご心配をおかけしている。信頼の回復や補償をしっかりやり、再発を防止するためにあらゆる手段を講じていきたい」とした。  2番の「あらゆる年代から支持されるサービスと価格」について、記者から「(KDDIにおけるUQ mobileやソフトバンクにおけるワイモバイルといった)サブブランドを作る計画はあるか」という質問が出た。これに対し井伊副社長は「何もまだ検討していないのが正直なところ。どういった戦略が2番の目的を達成できるかは考慮しないといけない」としつつ、「ただ後追いしてもそれが客の望む姿か。重要な戦略なのでしっかり考えたい」として、サブブランドの展開には含みを持たせた。