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迫るノーベル賞、日本人3年連続なるか。有力候補者と研究成果を一挙紹介

迫るノーベル賞、日本人3年連続なるか。有力候補者と研究成果を一挙紹介

昨年、リチウムイオン二次電池の発明・実用化で化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェロー

 ノーベル賞の発表が来週に迫った。自然科学3賞は10月5日に生理学医学賞、6日に物理学賞、7日に化学賞が発表される。2018年に京都大学の本庶佑特別教授が生理学医学賞、19年に旭化成の吉野彰名誉フェローが化学賞を受賞し、科学分野での日本の存在感を示した。日本人の3年連続受賞となるか。有力候補者とその研究成果を紹介する。 全固体電池研究ブーム!突破口を開いた研究者が語る最前線

【生理学医学賞】EPR効果、個別化がん治療の先駆

迫るノーベル賞、日本人3年連続なるか。有力候補者と研究成果を一挙紹介

抗がん剤治療の進歩に貢献

 生理学医学賞は、効率的にがん組織だけに作用する治療法の開発に貢献した、バイオダイナミックス研究所(熊本市中央区)の前田浩理事長と国立がん研究センター研究所の松村保広客員研究員が有力候補だ。  がん細胞周辺の血管から分子が抜けやすい性質により、大きな分子の化合物ががん細胞に集積する「EPR効果」を解明。抗がん剤をがん組織のみに作用させる薬物送達システム(DDS)の基になる発見として薬学分野で注目され、抗がん剤治療の進歩に貢献した。  京都大学の森和俊教授も有力候補の一人。たんぱく質を作る細胞小器官「小胞体」の中の変性したたんぱく質の検出と修復の仕組みを発見。この仕組みを応用して糖尿病やがんの解明、治療法の研究が進んでいる。  また、国際的な科学情報企業のクラリベイトは23日、ノーベル賞受賞が有力視される生理学・医学分野の研究者として、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターの中村祐輔所長らを選んだ。  中村所長は「遺伝的多型」と呼ばれる、全遺伝情報(ゲノム)のデオキシリボ核酸(DNA)配列が個人間で異なる場所を見つけるマーカー(目印)を開発。  これを応用して「個別化医療」を推進。個別化がん治療の先駆となった。現在、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期でプログラムディレクターを務めている。

【物理学賞】強相関電子系の第一人者

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量子テレポーテーションに利用する「量子もつれ」の3Dモデル(東大・古沢研提供)

 19年の物理学賞は、宇宙分野の2テーマで欧米の研究者3人が受賞した。過去の傾向から20年は物性など応用分野が対象となる可能性が高く、日本人の受賞も期待される。  毎年有力候補に挙がるのが、東京大学の十倉好紀卓越教授(理化学研究所創発物性科学研究センター長)だ。十倉教授は、高温超電導、巨大磁気抵抗、マルチフェロイックス(磁性や誘電性など複数の性質を併せ持つ)物質など数多くのテーマで実績を持つ、「強相関電子系」と呼ばれる物性物理学分野の第一人者。省エネルギーで大容量の情報を記憶できるメモリーなどへの応用を進める。  磁石の性質を持つ半導体を開発し、「半導体スピントロニクス」分野を開拓した東北大学の大野英男総長も有力。従来の半導体と融合した低電力の集積回路を実証している。また、鉄系高温超電導体などを開発した東京工業大学の細野秀雄栄誉教授、世界最強のネオジム磁石を開発したNDFEB(京都市西京区)の佐川眞人社長の呼び声も高い。  近年話題の量子コンピューター分野には、「量子テレポーテーション」の実験に成功した東大の古沢明教授、カナダのDウエーブ・システムズの商用量子コンピューターの開発につながった「量子アニーリング」を提唱した東工大の西森秀稔特任教授らがいる。  ほかにも光通信や次世代半導体、光デバイス、光格子時計など多くの期待分野がある。日本が強い物理学賞の行方に注目だ。

【化学賞】自己集合やルイス酸触媒開発

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「自己集合」を化学合成に応用

 化学賞は生理学医学賞と物理学賞に重なるテーマで決まる場合が多い。だが過去20年間をみると、00年と01年、05年、10年、16年と約5年おきに化学合成・反応分野が受賞している。20年は、同分野が受賞する可能性が高い。  ノーベル賞の登竜門とされるイスラエル・ウルフ賞の化学部門を18年に受賞した東京大学の藤田誠卓越教授は有力候補の一人だ。分子が自発的に構造体を形成する「自己集合」を化学合成に応用。有機分子と金属イオンを混ぜるだけで、合成が困難だった「正方形の分子」を1990年に世界で初めて作ることに成功した。  同技術を応用し、金属イオンとわずかに曲がっていて金属イオンと弱く結合する「配位子」を混ぜて巨大な球状分子を合成。さらにどんな分子でも構造を解析できる「結晶スポンジ法」を開発した。  2001年に化学賞を受賞した名古屋大学の野依良治特別教授らと切磋琢磨(せっさたくま)しながら触媒化学の研究に励んできた、中部大学の山本尚教授も候補の一人だ。広い意味で定義される酸・塩基の反応で、かさ高い構造を持つ「ルイス酸触媒」を開発。副生成物が少なく目的の反応を優先的に進ませる技術を確立した。  同技術は医薬品などの機能性化合物に重要な不斉分子の合成などに応用されている。血圧降下作用がある「プロスタグランジン」の合成や工業的な不斉酸化で使うバナジウム触媒などに使われている。  他に、東北福祉大学の小川誠二特任教授や桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らが候補者として挙がっている。