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がんでこの世を去った息子を思い「肛門認証」開発の医師、自らもがんで死去

がんでこの世を去った息子を思い「肛門認証」開発の医師、自らもがんで死去

Photo: ImagineGolf / Getty Images

「息子が生まれたのが100年後だったなら」 人間の体であまりイメージの良くない部位のひとつに、肛門がある。排せつ物の出口であるために汚いと感じる人も多いだろう。 そんな肛門のイメージが変わるかもしれない研究が最近話題になった。ニュースサイト「ザ・ヴァージ」は2020年4月、次のように報じている。 「米スタンフォード大学の研究者らはスマート・トイレの試作品を作った。そのトイレは、利用者を『アナル・プリント(肛門紋)』で識別し、モニターする。トイレにはカメラやセンサーが設置されており、排せつ物の情報を集め、利用者の健康状態を調べるためのデータを分析する」 これは英誌「Nature Biomedical Engineering」に掲載された研究で、肛門でトイレの利用者を識別し、便や尿から健康状態をチェックし、クラウドなどへ情報を蓄積して健康を管理するものだ。トイレするだけで日常的に健康状態をチェックできるという、次世代のスマートなトイレである。 毎日トイレで健康診断をできれば、がんなどの病気も早期発見できる可能性があるだろう。スタンフォード大学医学部の説明によると、「このスマート・トイレは便や尿から、がんなどの幅広い病気を発見できるテクノロジーを搭載している」という。 そしてこの研究を率いているのが、サンジブ・ガンビア医師。実は15年前からこのアイデアを温めており、がんなどを早期発見するべく研究に力を入れていた。 そんなガンビア医師について、非常に悲しいニュースが最近報じられている。 米誌「ザ・サイエンティスト」は、ガンビア医師ががんとの闘病の末、57歳の若さで死去したと報じた。 「ガンビア医師は特に、陽電子放出断層撮影(PET)によって細胞の活動状況を画像で調べるためのトレーサーを開発したことで知られる」 がんなどの病気の診断を専門とし、これからスマート・トイレの開発を進めようとしていた医師が若くしてがんで亡くなるとは、悲劇的なものである。 スタンフォード大学の追悼記事によれば、ガンビア医師がスマート・トイレなど病気を早期発見するためのテクノロジーに傾倒していた理由には、実のところ、2015年に彼の身に起きた悲劇があった。 2013年、ガンビア医師の10代の息子ミランが「非常に攻撃性の強いタイプの脳腫瘍(がん)だと診断された」という。しかもそのがんはまさに、ガンビア医師が実験室で研究を続けていたものと全く同じタイプだった。 ガンビア医師と研究員たちはそのがんに打ち勝つため、ミランと一緒に21ヵ月戦った。しかし、「助けることができなかった。2015年にミランは(16歳で)死亡した」。その後、ガンビア医師は「早期発見システムを開発するべく、それまで以上に一生懸命研究を続けていた」という。 生前のガンビア医師は息子の死について、カンファレンスでこう語っている。 「いま私を突き動かしているのは、100年後に息子が生まれていたなら、精密な医療のツールによってもっと長く生きることができたはずという思いだ」 それから5年後、自らもがんに冒されて帰らぬ人となった。なんという数奇な人生だろうか。 冒頭の「ザ・ヴァージ」の記事によれば、スマート・トイレの次なる試作品は「今年の終わり」までに完成する予定で、さらに進化したトイレになるらしい。 ガンビア医師の思いは死んでいないということだろう。