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【巨人】戸郷翔征と大江竜聖は6位、中川皓太は7位…なぜ主力の3投手はドラフト下位まで“残っていた”のか

【巨人】戸郷翔征と大江竜聖は6位、中川皓太は7位…なぜ主力の3投手はドラフト下位まで“残っていた”のか

ドラフト6位で入団した戸郷だが、スカウトの確かな眼とコーチの指導方針が合致し、才能が開花。大江や中川も下位指名から1軍で主力に成長した

 今季の巨人の1軍投手陣では、ドラフト下位の男たちが力投し、首位快走のチームに貢献している。好リリーフを見せる中川皓太は15年の7位、サイド転向で存在感を増す左腕・大江竜聖は16年の6位、先発ローテで5勝を挙げている戸郷翔征は18年の6位だ。なぜ彼らは巨人が指名するまで“残っていた”のか。彼らのアマ時代を知るドラフトの達人、流しのブルペンキャッチャーこと安倍昌彦氏(65)を直撃した。(加藤 弘士) 【一覧】逸材ズラリ…2020年ドラフト候補  中川は15年のドラフト7位で東海大から巨人入りした。5年前のドラフト直後、報知新聞東京本社で行われたトークイベントに出演した安倍氏は、活躍に太鼓判を押し、集結した100人のG党に熱く訴えかけた。  「『7位の中川を絶対に忘れないで下さい』と力説したことを覚えています。活躍すると絶対的な確信がありました」  そこまで推したのは、なぜか。  「その頃からでしょうか。スピードガンの球速が大々的に報道されるようになってから、プロ野球界は全体的に速い投手へ、速い投手へとスカウティングがなびくようになったんです。捕手目線で考えると、速い球は当然打ちにくいんですが、いやらしい投手も同じくらい打ちにくい。そういう意味では巨人の13年5位の平良拳太郎(現DeNA)も、球速は140キロ前後でしたが、ボールがむちゃくちゃ動くんです。『こういう投手は絶対使える』と追っていたところで、これは!と引っかかったのが、この年の中川なんです」  東海大時代の中川は最速145キロをマークしていたが、球速で勝負する「見栄えのする」投手ではなかった。4年春のリーグ戦開幕当初はエース・吉田侑樹(現日本ハム)に続く2番手。それでも6勝4完封で優勝に貢献した。秋も5勝1敗、防御率0・85で2季連続の最優秀投手。7位は意外にも思えた。  「僕がドラフト前に行った『ひとりドラフト」で、中川は3位でした。だから7位で指名した巨人は実にお買い得だな、と思ったものです。ドラフトでは各球団、1、2位はローテ投手、野手なら上位や中軸を打てる打者を選ぶ傾向があります。中川はそういった王道ではないですが、実戦派。対戦する打者にとっては嫌な投手です。素晴らしい指名でした」  大江は二松学舎大付で1年夏と2年春に甲子園出場。2年春には初戦の松山東戦で毎回の16奪三振を記録し、一躍その名をとどろかせた。だが、指名順位は6位だった。  「大江は東京の高校野球ファンなら知らない人はいない投手でした。でも身長173センチと小柄なこともあり、『角度がない』という見方をされ、高評価には至らなかった。今はアマの世界でも190センチ近い投手が大勢いますから。それでもプロ4年目に1軍へ上がってきましたね」  「高卒入団の選手はできれば3年目、何とか4年目までに結果を残さなきゃならない。5年目になると同世代が大卒で入ってくる。指導者の視線はどうしてもフレッシュなそっちに注がれます。大江は間に合いましたね。中継ぎは適材適所です」  その理由は何か。  「大江は球速以上に球質がいい。スライダー、チェンジアップと、いつもストライクが取れる球種が2つある。後は勝負度胸。高校時代から勝負度胸で彼の右に出るヤツはいなかった。左のサイドというアドバンテージもある。やっと立ち位置が見つかりましたよね」  そして現在、チームでは菅野に次ぐ5勝を挙げ、先発ローテを守り抜く戸郷も、18年ドラフトでは6位の指名だった。  「彼が2年生だった夏の甲子園を生で見た時、『こいつが力をつけてきたら、すごい投手になるな』と思ったものです。3年夏に行われたU18日本代表対宮崎県選抜の壮行試合、サンマリン宮崎の興奮は忘れられません。あの夜は戸郷に一番驚きました」  代表チームには大阪桐蔭の根尾、藤原、報徳学園の小園ら強打者がメンバー入りしていたが、戸郷は根尾と藤原から三振を奪うなど5回1/3を投げて9Kと圧倒した。  「根尾も藤原もファウルがやっとでした。それでも6位まで残った理由の一つには、各球団の現行のドラフトのシステムにあると思っています」  「今の各球団の決め方は、日本中にいる担当スカウトが『これだ』と思った選手をスカウト部長に見せて、部長が『これでいこう』と思った選手が候補リストに残る例がほとんどです。夏の地方大会で雨が続いて日程が狂ったりして、部長に見せられず、リストから外れた選手はたくさんいます。戸郷もこの年、準々決勝で負けている。各球団も担当スカウトは見ていると思いますが、上の方が見る機会がない球団が多かったのでしょう」  戸郷の超個性的な投球フォームも、スカウトの好みは分かれたようだ。  「セオリーからすると外れていますからね。野球については『こうでなくてはならない』とかつての概念がまだある。でも人間の体は『百人百色』。彼の体の柔らかさ、強さからすると、あの投げ方が一番彼に合っている。入団後、そう考える指導者がジャイアンツにいた。フォームを直そうとしなかったのが、ジャイアンツの最大の勝利でしょう」  3投手はいずれも、個性を評価して指名され、入団後も大切に伸ばした結果、1軍の戦力になった。安倍さんは言う。  「下位指名こそ、スカウトの腕の見せどころ。今秋のドラフトでは、巨人がこの3人の『収穫』からいかに学習して、どう指名選手に反映してくるのかが、楽しみです」  ◆安倍 昌彦(あべ・まさひこ)1955年4月24日、仙台市生まれ。65歳。早大学院を経て早大2年まで捕手一筋。同3、4年時には早大学院で監督。卒業後、会社員をしながら2000年から雑誌「野球小僧」でコラム「流しのブルペンキャッチャー」を連載。東海大・菅野智之、花巻東・大谷翔平らドラフト候補のボールを実際に受け、独特の筆致で描く文章が話題に。主な著書に「スカウト魂 たたき上げの詩」などがある。